アメリカの現状は、およそ考えることのできる者にとっては全く驚くべきことだ。法律もなく、政府もなく、各植民地の好意の上に成立し、好意によって認められたもの以外にはなんの統治様式もない。我々は、前例のない感情の生起によって結ばれているのだ。にも拘らずその感情はやはり変わりやすく、またあらゆる秘密の敵がそれを解消させようと躍起になっている。我々の現状を言うならば、立法権を持っているが法律がつくれず、知恵を持っているが計画が立てられず、政治機構を持っているが名称がつけられないということだ。なお奇妙で驚くべきことには、完全独立を目指しながら従属のために戦っているのだ。こんなことには先例がなく、またこんな事件はかつて生じたことがない。いったいこの先どうなるのか、誰がこれを説明できるだろうか。現在のような不安定な状態では、誰の財産も安全ではない。大衆の心理は気まぐれだ。また彼らは前途に明確な目標を見つめていない。そのための架空な目標を追い求め、また世間の思惑に左右されている。

トーマス・ペイン『コモン・センス』「付記」より(小松春雄訳、岩波書店、1976年)

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