ウクライナについて考えようとしても、カジミール・マレーヴィチの生涯を反芻してしまうので、どうしても美術と結びつける自分がいる。初期の後期印象派的な画風、抽象全盛期、そして晩年は具象に回帰するのだが、スターリン政権下の弾圧を挙げるのは都合が過ぎるか。抽象の極地に至った反動だろう。
彼の代表作に《黒の正方形》(1915年、トレチャコフスキー美術館蔵)という作品がある。画面には何も描き込まれておらず、ただ黒い空間が広がるだけである。最初は、今の世相に似ていると感じていたが、図版を眺めているうちに別の作品を連想した。画面全体を縦横無尽に走る亀裂が共通していて思い出した

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