何かの話の末、字のことについて先生はこんなことを言われた。〈字というものは早く書いては駄目ですね。できるだけゆっくり書いて、それで早く書いたように勢いよく見えなければ、ほんとうの味のある字はできないものです。画でも同じことで、画の線描きなんか、ゆっくりゆっくり遅筆して、出来あがったらいかにも早く、勢いよく画いたようにみえなければ、深味と厚味のある線は出ませんよ〉

吉田五十八が小林古径から「筆と速度と勢い」に関して教えられ、感銘を受けたエピソード
『なにはづ』所収、1968年7月号

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