「写実とは教わりならうものでしょう。絵の上では自然から色々教わり、それが土台になって工夫されて行くので、精神的とか、感動とかを表すその為めに必要なことと思われます。写生などしなくても、そのものの真が画き出せればその必要は無いでしょう。それは巨匠の技で、矢張り写生して見ると、只見て居た丈けのものよりも他のものが見え、全然気付かなかった形や色が発見され、つまり一層よく見る事になります。之れを表面丈けでなく、奥深く如何に表現して行くかは、人別々の工夫です。線や色の形式を重んじて、要約された絵でも、又宋元の細密に描かれたものにしても、この写実が大切な基本であると思います。」

小林古径「東洋画の写実〈レアルの研究〉」『美術』一〇-二所収、1935年2月

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