「(梶田半古)先生は写生ということを非常に重んぜられて、このことは常に我々にも注意された。そこで我々が先生に物の形などを聞きに行くと、自由に様々の形を描いて示されて、例えば鮒なら鮒の正面から見た処、横から見たところ、背後から見た処という風な具合に、それ等を解剖的にまで教えて下さった。従って我々の描いたものに就ては、細部といえども見逃さず、充分行き届いた注意を与えられた。
それから先生がよく言われたのは画品ということであって、少しでも卑しい点があると酷く先生は嫌われた。写生と画品、それが特に先生の重んぜられたものであった。しかし色ということも非常にやかましく言われた。」

小林古径「弟子の見たる梶田先生〈噫、梶田半古氏逝く〉」『中央美術』三-五所収、1917年5月

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