「古径と土牛の線描の質と情はむろん異うが、どちらも練り鍛えた美しい線描で、牛の複雑な面や量を巧みに線に盛込んでいる。古径の絵には厳粛で倫理性がある。土牛の絵には、清純の中に感覚的な美しさがある。古径の牛は、藤原時代のものでも見るように、どこか淋しみと間の抜(顔のあたり)けたところがあって、それでいて気格が高い。土牛の牛には、近代的な新しさと艶があり、そしてあかるくやわらかな情がある。」

難波専太郎『奥村土牛』(美術探求社、1961年)

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